美しさの基準は見る人によって異なりますが、その視点は生まれ育った文化の影響を大きく受けます。 ほとんどの人は自身の美しさに気づいておらず、自身の価値すらも信じていないのです。 だからこそ、「あなたは美しい」と言われることが大きなインパクトを持つのです。
このことは、アメリカの若い映画監督シェイ・グローバーの作品で見事に表現されています。
彼女はアートプロジェクトとして5分の短編動画を制作。自分が通った高校を歩いて、「美しいと感じた物や人の写真を撮る」という内容です。
参考動画(Youtube)⇒https://youtu.be/aW8BDgLpZkI
彼女が接してカメラに収めた人々の外見は、実に様々。しかし、「美しい」と言われたときの反応は、驚くほど似ています。「美しい」と突然言われて、多くの人が明るい表情になったのです。
美は多くの要素によって左右されます。いくつかの要素は普遍的ですが、中には世界の片隅でしか通用しない美の要素もあります。世界中の美的感覚を知ることで、自信が深まるかもしれません。
・あなたが生まれ育った文化
美しさを感じるとき、自分が育った文化が大きな影響を及ぼします。美的感覚は若年期に形作られ、その感覚が内と外の美の感じ方になります。また、何を美しいと感じるかは、文化によって大きく異なります。
極端な例をいくつかご紹介しましょう。
- インドネシアでは、女性はとがった犬歯を削ると、魅力的になると思われています。
- アジアで数百年前に始まった纏足(脚を締め付けて成長させないようにする)は、ほんの数十年前まで中国で行われていました。
- タイのカヤン族では、首を長くするのが常識となっています。
- イランの女性は、鼻形成したように見せるため、ニセの外科用包帯を身につけることも。
- ニュージーランドのマオリ族は顔にタトゥーが魅力的だと考えています。
・メディアとポップカルチャー
メディアとポップカルチャーは、美的感覚を形作っています。外見的な美しさだけでなく、立ち居振る舞いやスタイルも重要な要素です。一昔前までは、とにかく細い体型の女性がもてはやされましたが、今は程よく引き締まった曲線美が脚光を浴びています。
・シンメトリー(対称性)
外見的な美しさに関して言えば、顔と体の特徴は避けては通れません。顔の左右対象性が魅力として解釈されるという考えが、長らく受け継がれてきました。私たちの脳はバランスを好み、顔の左右対象性は古代ではパートナーを選ぶときの健康の指標として使われたりしました。
・パーソナリティ(人格)
パーソナリティも、美しさを感じる際に大きなインパクトを及ぼします。マザーテレサは人道的活動で美しい心の持ち主と称されました。同じことは、シェイ・グローバーの動画からも見て取れます。シェイは、所作振る舞いや人との接し方が美しいと感じられる人を明らかにピックアップしています。
美のさまざまな意味
『美』という言葉は、外見的な感じ方を表すだけでなく、さまざまな意味を持ちます。
外見の美しさは、美的・芸術的思考と同じくらいの価値があるでしょうか?そしてそれらは、誰かをいたわる美しい精神よりも価値があるものでしょうか?
これは興味深くもあり、困惑させる質問でもあります。というのも、「肉体的に魅力的な人は、人柄も良く知的」と認識されるという研究結果が示されているのです。
これは「美のバイアス(認知バイアス)」と呼ばれるもので、私たちの外見が人の第一印象に影響を与えていることを示しています。
シェイ・グローバーの動画は私たちに世界や周りの人々へと目を向けさせ「真の美しさとは何か」を今一度考えさせてくれるものでしょう。